木彫の熊 大井競馬場で買った脱力系木塊

千品千話 木彫の熊

これは木彫の熊である。何の変哲もない、さえない置物だが、骨董にかかわって一番長い間身の回りの置かせてもらっている。認めたくはないがこれが私のお気に入りなのだろう。
紹介させてもうらうと筆者は当サイトの管理人であり、日々古物を撮影し続けて3年経った。たぶん3万点以上は撮影しただろうか。美術館にもいくようになった。振りかえってみると色々な物を見たとは思う。しかし、何が一番か、と問われてもまだわからない。骨董好きの方には、そんな贅沢な環境にいて何を見てきたんだと言われるだろう。胆大心小、格調高雅、きれいな物から圧倒されることはあっても、自分の物にしたいという気はおきなかった。
もちろん、まだこの世のほん一部しか見てない。まだ見てない物はたくさんある。

そんな訳で、現在の手元の一品、木彫熊だが、出会いは忘れもしない大井競馬のフリーマーケット。ふと目に止まった木塊を手に取ってみていると「中まで本物の木でできてるよ」と店頭のおじさん。そんなの見ればわかると思いながらも、可愛いいなぁと思い1500円で買った。ストーリーはそれだけである。一目瞭然だが、いわくつきの恐怖の人形でも、死んだおばあちゃんの形見でもない。
「Is this a dog?」
「No. This is a Bear.(笑)」
この木彫、とにかく人がよく聞く。よく触る。木とはさわり心地のいいものらしい。子供から大人まで外国人日本人問わず、うちに来た人間はこれを見て失笑し、撫でたり、持ち上げたり、指で弾いたり、…まぁいわゆるほほえましい動作をしてくれるのだ。もしこれが、神妙な不動明王像だったらこうはならない。遠巻きに見て、へぇ~と感心した趣で、この仏像売ったらいくらになるの? と聞かれて終わりである。

対人障壁がない置物というか、あのリラックマの1000億円市場ヒットに通じる、脱力安心癒しのキーワードの力に改めて気付かされたというと大げさだが、こちらは直径20cmぐらいの丸太から削りだされたお手製の木彫。大量生産はできない。誰かのサインがあるわけでもなく、どこの誰が何のためにつくったかもわからない。貧乏大工があまった木材で子供のクリスマスプレゼントのために夜な夜な彫ったのか、小学生が図工の時間で彫ったのか。いずれしても適当に彫られたようにみえて左右ととのっているし、サンドペーパーか何かでよくよく磨かれていて、角張った箇所ががまったくない。誰の目も気にせずに結構一生懸命につくられたような気がしてくる。同時に作者のやさしさ、自由さを感じるのだ。

しかし、ただの木彫。いくらほめても世間体が美術品に昇格させはしない。ただ、この脱力系の木の塊は、原稿を書くノートパソコンの横にズデンと座っていて、突き出した両腕はペン置きとして重宝させてもらっている。
大和骨董図鑑管理人:坂元利治

『原稿募集の知らせ』
あと、最初なので簡単に説明しておくと、このコーナーは各自が持つ骨董品・思い出品・美術品・珍品…、物について語ってもらうところです。生きてればいろんな物を手にすることになり、中にはお気に入りや愛蔵品にまで登りつめたり、よくわからないけど気づけばずっと持っているなんてものある。一生手放したくない思い出の品、影響を受けた物、己の美意識で集めたコレクターこだわりの一品、見定めた一品、他人が見ればただの物でも自分にとっては違うモノ、そんな話は意外と多いはず。
大和骨董図鑑ではそんな「モノ話」を募集してます。もしよろしければ、原稿(文字量自由)をこちらまで寄稿お願いします。なお、原稿は当方で選定した上で筆者了承を段取り、掲載決定の際は1万円で買い取らせていただきます。